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エスキモーのくにから
エスキモーの国から
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 12,797 字 · 26 页
問題は鉄道との競争にある。
国鉄が技術的に近年躍進をつづけているので、たとえば新東海道線が完成された暁には、東京大阪間の航空便は、あまり意味がなくなる。これは将来は、福岡までのびるかもしれない。
こういう悲観的な考え方は、現状をそのまま先にのばしたところからくるのであって、原則的にみて、空中を行く方が、地表を走るよりも、時間的にはずっと有利なはずである。
それが或る場合には、あまり効果を示さないのは、都心から飛行場までの輸送の問題が等閑視されているからである。
この問題と限らず、いわゆる「小運搬」の問題が後廻しにされがちであることは、何処でも同様である。極端な例になるが、アメリカからグリーンランドまでの旅行は、この頃は十二時間の飛行ですむ。
しかしそれはフィラデルフィア郊外の飛行場から、グリーンランドのチューレまでの話である。
私たちは、そこから氷冠上を二百二十マイル奥地へはいったところにある観測地点へ行くのであるが、その旅行は、昨年までは、橇列車であった。絶好の気象条件のときで、まる三日間、一寸天気がくずれると、五昼夜かかった。
札幌を出てから、本当に飛行機が千歳をとび立つまでの時間は、千歳仙台間の時間とほぼ等しいが、それよりももっと悪かったわけである。