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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

尤もこれは通訳の限りでなかった。

「本当に持っているんだね?」

と私は松本さんに囁いた。

「その後買ったのさ」

と松本さんが答えた。

「太田原さんは伯爵でございますか?」

と一人の淑女が定兼君に訊いた。

「さあ」

「日本の伯爵のお方に船でお目にかゝって、種々とお話を承わりました」

「はゝあ」

「その方の御先祖が矢張り大名で朝鮮征伐にお出になったそうですから、太田原さんも伯爵でございましょう」

「伯爵とは違いますけれど、サムライ族で勲三等でございます」

「サムライ族と申すのは矢張り貴族の一種でございましょう?」

「然うです。昔は本当の貴族よりも幅を利かせたものでございます」

と定兼君は頻りに取繕っていた。

観光団はプログラムが定っていたから、二時間足らずで急遽引き揚げた。あれでは鑑賞の余裕もなかったろうが、長くいられると通訳が困る。私達は直ぐに会社へ戻った。社長は上機嫌で、

「熊野君はナカ/\度胸が好いね」

と褒めてくれた。

「いや、随分まごつきました」

「あれぐらい図々しくやれゝば結構だよ。以来西洋人の客が見えたら君に頼む」

「恐れ入ります」

「発音が少し変則で耳障りだけれど、何うせ日本人について習った英学だろうから、それは仕方がない」