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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「はあ。大体然うした傾向です」

「ふうむ。妙なことがあるものだね。何うも合点が行かない」

と社長は考え込んだ。

「兎に角、私はこの会社が本務ですから、以来書くことはもう差控えます」

と言って、私は頭を下げた。

「いや、それには及ばない」

「…………」

「結構ですよ。実は熊野君」

「はあ」

「我輩も考えて見れば、もう取る年で、先が短い。今の中に自叙伝を書いて貰いたいと思って、この間から然るべき文章家を探していた。しかし会社外のものに頼むのも具合が悪いから、先頃中島君が義太夫を聴きに来た時、相談して見たら、君がナカ/\達者だということだった」

「はゝあ」

「それから君の書いたものを二三種読んで見たが、皆面白い。何うだね? 探偵小説がいけるくらいなら、自叙伝もいけるだろう?」

「さあ」

「似たり寄ったりのものだ」

と社長は至って大ざっぱに考えている。

「はあ」

「何うだね? 君、一つ引受けてくれるか?」

「はあ、私の力で出来ることなら、犬馬の労を辞しません」

と私は首が飛ぶのかと思って心配していた矢先だから、殊更意気に感じて、直ぐにお受けをした。

「それは有難い」

「波瀾重畳の御生涯と承わって居りますから、余程浩瀚なものになりましょうな?」