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ジャーナリズムざっかん
ジャーナリズム雑感
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页
新聞記者が新聞紙上に日々の出来事を記載するにこの意図があるかどうかは明らかでないが、もしそういう意図があってそうしてそれを実行し成就しようとするならば新聞記者というものは、セザンヌやまたすべての科学者を優に凌駕すべき鋭利の観察と分析の能力を具備していなければならないことと思われるのである。新聞記者になるのもなかなかたいへんなことである。
翻って考えてみると、科学者自身の間にもまたこのジャーナリズムのそれのような類型的の見方をする傾向が多分に存在している。従来用い古した解析的方法に容易にかかるような現象はだれも彼も手をつけて研究するが、従来の方法だけでは手におえないような現象はたとえ眼前に富士山のようにそびえていてもいっさい見て見ぬふりをしているという傾向がたしかにあるのである。しかし、だれか一人のパイオニアーがその現象に着眼して山開きのつるはしをふるって登山道がつき始めると、そうすると、始めて我れも我れもとそのふもとに押しかけるようになるのである。これも科学的ジャーナリズムの発達のおかげで世界じゅうの学者の研究が迅速に世界じゅうの学者の机上に報道されるからである。