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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

。私があなたにマゴコロこめて奉仕することを許していたゞきたいものです。如何なる仰せにも従います。犬馬の労をつくします。私はあなたの心もからだも、下僕のマゴコロの尊敬をこめて愛し仕えますから、どうか私と遊んで下さい。この願いをきゝいれて下さい」

ヤス子の顔色は相変らず犯しがたいものがあったが、むしろいくらか、やわらかな翳がさして、

「私は肉体にこだわるものではありません。終戦後、様々な幻滅から、私の考えも変りましたが、然し、理想をすてたわけではありません。肉体の純潔などゝいうことよりも、もっと大切な何かゞある。そういう意味で、私はもはや肉体の純潔などに縛られようとは思わなくなっているのです。然し、肉体を軽々しく扱うつもりはありませず、肉慾的な快楽のみで恋をする気もありませぬ。社長はよく仰有いますね。恋は一時のもの、一時的な病的心理にすぎないのだから、と。それは私も同感致しておりますのです。然し、恋の病的状態のすぎ去ったあと、肉体だけが残るわけではありますまい。私は恋を思うとき、上高地でみた大正池と穂高の景色を思いだすのでございます。自然があのように静かで爽やかであるように、人の心も静かで爽やかで有り得ない筈はない、人の心に住む恋心とても、あのように澄んだもので有り得ないことはなかろうと、女心の感傷かも知れませ