轻松读懂日语经典作品
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
箒をわきに立てかけて、四十がらみの掃除女だ。
「……職場のもんじゃないんだけれど――」
いち早く、
「やれ、やれ!」
「お前の箒はお馴染だヨ! 遠慮するな!」
「……じゃあ……私は」
神経質に咳ばらいをして、掃除女はギゴチなく田舎訛ではじめた。
「はあ十五年労働婦人として働いてます。労働組合員で、区の女代議員ですが、こねえだ消費組合売店で、こういうことがあった。
私は茶うけに塩漬鰊を一キロ三分の一買った。塩漬鰊はキロ四十七カペイキだ。それに三分の一だから、六十二カペイキ半になるわけだ。……そうだねえ?」
「その通り!」
「――そこの売子が私に渡した勘定札には六十一カペイキと書いてある。そいつは間違えたのサ」
掃除女は、喋るのに馴れてだんだん大胆にみんなを見廻しながら長い肱を動かした。
「そこで私がそいつに云った。お前さん、これじゃ勘定が違うよ。すると、どうしたね、お神さん? 私が云うのさ。お前さ、少なく書きすぎてるよ。すると、その売子が云うことには、そんなら文句はないじゃねえか、そいだけあお前さんの儲け分だヨ!」
ドッと、みんなが笑った。掃除女の眼に新しい腹立たしそうな光が閃いた。