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ソヴェトぶんだんのげんじょう
ソヴェト文壇の現状
宮本 百合子
「綜合プロレタリア芸術講座 第一巻」内外社、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,896 字 · 58 页
――地下室なのだ。
ピリニャークが扉をあけて、サア、どうぞと云った。自分はその晩日本のキモノをきていた。だからみんなが見る。しかし、テーブルにいろんな連中と並んで、四辺の光景を眺めると、深く感じることがあり、自分が見られるのなんか忘れてしまった。
そこは地下室だから、窓はない。イキレた空気の中に電燈が煌いている。白布をかけたテーブルがあっちこっちにあり、大きい長椅子がある。ピアノがガンガン鳴る。弾いてるのは赤い服きた瘠せた女だ。肩の骨をだして髪をふりながら自棄に鳴らしている。
長椅子の上では、やっと大人になりかけた若者――ゲルツェンの家の地下室へ来ているからには、いずれソヴェト作家の卵だろう――が、女をひとりずつつかまえて、顔の筋をのばしている。彼等の前には、酒、酒。食いあらした料理の皿。爺さんの給仕が、白手袋をはめて、燕尾服のしっぽをふりまわしながら、その間を働いている。汗は爺さんの額に光っている。ピアノの音。三鞭酒のキルクのはぜる音。ピリニャークが自分たちに訊いた。「何をたべましょうか?」
はじめて自分は「作家の家」の内部を見たのだから、おどろいた。