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トコヨゴヨミ
トコヨゴヨミ
田山 花袋
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页
「それは好いですな、登録すれば一層好いんだけれども、まあ、誰も始めは真似るものもあるまい。少し売出してからにする方が好い。」などと言ってて、版権登録の手続などを教えて呉れた。勇吉は土産に持って行ったものを出すのが恥かしいような気がした。
帰る時に、漸く思切って、「これはあっちで取れたので御座いますが、私がつくったんだと猶好いんですけれども……そうじゃ御座いませんけれども、折角持って参ったんですから。」
こう言って、木綿の汚れた風呂敷から新聞紙に包んだ一升足らずの白隠元豆を其処に出した。
「イヤ、これは有難う。好い豆が出来るな、矢張り、彼方では。」
博士は莞爾しながら言った。
勇吉は唯まごまごして暮した。印刷が出来上らない中は販路の方に取りかかることも出来ないので、仕方なしに職業の方を彼方此方で訊いて見たりなどした。路の通りにある職業周旋のビラの沢山に張って出してある家の中にも入って行って見た。其処には矢張かれと同じように職業を求める青年がいて、あるかなしの財布の中から五円札を一枚出したりしていた。勇吉はいろいろなことを訊いて其処から帰って来た。
ある学校友達は、此前東京に出た時分には、早稲田の学校に入って劇の方に志していたが、此頃では大分文壇に名高くなって、その人の書くものなどが時々芝居に演ぜられたりなど