轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页
というのは、それから二三日後の夜のことでした。
勤めの帰りに『すみれ』に立ち寄って見ると、やはりその夜も猿沢が横柄な恰好で、しきりに酒を飲んでいました。あの夜以来、猿沢はここに毎晩入りびたっているらしい風なのです。もうすっかり酔っぱらっている様子で、顔をてらてらと赤くさせ、久美子をからかったりしているところでした。全くいい気なものだと、忌々しげに唇を噛み、蟹江はその傍にそっと腰をおろしました。
それから一時間ばかり、蟹江は猿沢といっしょに酒を飲みました。胸に一物あるので、蟹江はいつもよりコップの数を控え目にしました。肴はもちろん鰈の煮付けです。この頃では、黙っていても、久美子はこれを運んでくるのでした。
蟹江が猿沢にれいの談判を切り出したのは、その帰途、『すみれ』から二町ほど来た畠中道でした。彼はいきなりこう言ったのです。
「僕は久美子さんが好きなんだ。だから君は手を引いて貰いたい。だいいち僕の方が早いんだぞ」
十三夜の月明の畠中道を、猿沢はふらふらと歩いていましたが、いきなりそう切り出されて、さすがにぎくりとしたように振り返りました。しかし声だけは元気に言いかえしました。