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さんにんきょうだい

三人兄弟

菊池 寛

「赤い鳥」赤い鳥社、1919(大正8)年4月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,630 字 · 22 页

青空文庫

「それがいい、それがいい。都へ行けば、きっといいことがあるに違いない。」と、申しました。一郎次は、

「それなら善は急げというから、明日にも出立しよう。」と、言いました。そしてその晩は、みんなで色々出立の用意を致しました。

あくる日は、秋の空が気持よく晴れ渡って、太陽までが三人の出立を祝うているようでありました。三人は元気よく村を出まして、南へ南へと都の方を指して急ぎました。

途中で、一晩泊りました。村を立って、二日目の朝、大きな峠を登りますと、その峠の頂上から遥か彼方に、朝靄の中に、数限りもない人家が地面一ぱいに並んでいるのが微かに見えました。

「ああ、都だ。」と、三郎次が、大喜びの声を出しました。それから兄弟三人は、前よりも一層足を早めて、峠を馳け下りました。が、峠を下りましてから、都まではよほどあると見え、歩いても歩いても、黄色い稲田が道の両側にいくらでも続いていました。

大きい公孫樹が、道傍に一本立っていました。と今まで一筋道であった道が、その公孫樹の木の所から、三筋に別れているのに気が付きました。兄弟はちょっと困りました。

「どの道が一番近いのだろう。