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さんにんきょうだい
三人兄弟
菊池 寛
「赤い鳥」赤い鳥社、1919(大正8)年4月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,630 字 · 22 页
三 真中の道
左大臣藤原道世と言えば、天子様の第一番の家来で、丹波国の田舎までも聞えている、名高い人でありました。
その女の人は、しばらくすると、こう言いました。
「道世様が、こう仰っしゃいました。この若者は、遠い田舎から都へ出て来て、親類もない者に違いない。傷が癒れば、家来にして使うてやろうと、仰っしゃいました。」
それを聞くと、一郎次は、傷の痛みも忘れるほど喜びました。左大臣道世様の家来になることは、田舎の百姓の子である一郎次に取っては、この上もない出世でありました。
一郎次の傷は、ほどなく癒りました。そして、約束の通り、左大臣の家来になりました。
正直で、利口な一郎次の事ですから、グングン出世しまして、十年経つか経たないうちに、検非違使という役になりました。そして名も左衛門尉清経と改めました。
検非違使というのは、丁度警察署長と裁判所長とを兼ねたような、大層勢の強いえらい役で、盗賊や悪者を捕えて裁判するのが仕事でありました。
一郎次はこんなに出世しましたが、真中の道を進んだ二郎次と左の道を進んだ三郎次とはどうなりましたでしょう。
三 真中の道
真中の道を進んだ二郎次は、兄と弟とに別れてからは、駆け出さんばかりに、足を早めて急ぎました。