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あるくこと

三好十郎の仕事 第三巻

三好 十郎

三好十郎『三好十郎の仕事 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:歩くこと、鈴が通る、破れわらじ、廃墟(一幕)、猿の図、その人を知らず、冒した者、抵抗のよりどころ、アメリカ人に問う、「廃墟」について、「その人を知らず」について、日記より、「冒した者」について。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,472 字 · 667 页

青空文庫

せい 欣二さん、帰って来たのね?……そいで、誠さんやなんかは――?

双葉 裏の畑。

せい そう。……さてと、お夕飯の仕度――(立って炊事場の方へ)

双葉 私、おつゆを拵えたの。ミソが無いから塩だけなんだけど。

せい そう、そりゃ、ありがたいわ。パンが有るから、そいで結構ですとも。ええと――

(その時、上手扉の奥の戸外のかなり難れた所で、三平が、大きくどなり立てる声、「なんだ、君ぁ?」「どうして、こんな所で……」「君ぁ、ぜんたい、なんだ!」など言うのが聞きとれるだけで、まだいろいろに言っている言葉はハッキリしない)

双葉 ……どうしたんだろ?

せい 叔父さんと――誠さんが、なにか――?(双葉と眼を見合わしている。戸外では、まだ三平がどなっている。……双葉、思い切って、急ぎ足に上手扉から出て行く。それに続いて圭子も出て行く。せい子も一緒に行きかけるが、急に三平と誠とが喧嘩でもしている姿が頭に来て、立ちすくむ。薄暗がりの中で、その顔と着くずれた着物から洩れている襟元が白く浮きあがっている。……ブルブル顫える片手を頸のところへ持って行きながら、いくらかおだやかになった戸外の声に、耳を澄している。