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あるくこと

三好十郎の仕事 第三巻

三好 十郎

三好十郎『三好十郎の仕事 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:歩くこと、鈴が通る、破れわらじ、廃墟(一幕)、猿の図、その人を知らず、冒した者、抵抗のよりどころ、アメリカ人に問う、「廃墟」について、「その人を知らず」について、日記より、「冒した者」について。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,472 字 · 667 页

青空文庫

文学者は虫のせいやカンのせいで文学者になったのではない。また趣味や慈善のために文学者になったのでもない。のっぴきならず、しょうことなしにつまり石が水に沈むように文学者になってしまったのだ。頬がえしがつくものか。もはや、かくある現前のザインの地べたを踏んまえてテンゼンとして立ち、発言する以外にないのです。

そこで、飢えてはならない。ところが現実はまさに飢えんとする一歩まえにあります。しかも全体としては完全な自由競争に打ちすてられながらです。日雇人夫さえ組合をもっている時代に、頭脳労働者はチャンとした組合ひとつ持たないでいます。(著作家組合はあるにはあるが、今のところユニオンよりもソサエティに近い。もちろん、それでもあった方がよいにはよい。)

それが持てないほど、われわれの職業意識はひくく、現実にたいする感覚は分散的で、集中力を欠いているといえるでしょう。原民喜のような人が、あと百人ばかり現われれば、あるいはこうでなくなるかもしれません。さしあたりは仕方がない。一人びとりが自分だけを頼りにして自由競争の波をしのいでいくほかに方法はありません。実情においては原民喜と本質的に同じ状態――懐中に十円サツを一枚もっただけで、そして電車にひき殺されないようにして、われわれは歩いていかなければならないのです。