轻松读懂日语经典作品
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さんねんめ
三年目
山本 周五郎
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页
「お菊、気がついたか、友吉だ」
「……ああ」
「分るか、おいら、友吉だ、友吉だぜ」
抱起す手へ、お菊は力の抜けた自分の手をそっと絡んだ、濡れて、紙のように白い顔へ、にっと微笑がうかんだ。
「……友さん」
「なにもかも分った、お菊、おいらが馬鹿だった、堪忍してくれ」
お菊の手が弱々しく友吉の指を握った、大きく瞠いた眼からほろっと涙が落ちて、噎びあげるような声で云った。
「友さんたら……あたしを、あんな処へ入れたまま、忘れたりして、……駄目よ」
「……お菊」
「あたし、こわかったわ」
半分は泣声だった、そして懸命に笑おうとしたが堪り兼ねて、いきなり友吉に縋りつきながら叫ぶように云った。
「待ってたのよ……友さん」
わっと泣くお菊の手を、無言の謝罪を籠めて友吉は握りしめた。すり寄せた頬と頬、二人の涙の温かさが、二人のあいだにあった三年の月日をいっぺんに取り戻した。……窓の外へ、角太郎の漕ぐ舟の櫓音が近づいて来た。
天明元年七月二十二日の夜のことであった。