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さんねんめ
三年目
山本 周五郎
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页
二の一
――いけねえ。こんなことを独りで考えていたってしようがねえ、二人を捜すのが先だ、捜し出してたしかめてからのこった。……なに深川がどれほど広いもんか、きっと捜し出してやる。
友吉は迎え酒を呷ってから宿を出た。
大川の水は茶色に濁って、ほとんど岸に溢れかかっていた。新大橋には蓑笠を着けた人々が大勢出て、通行人の制限をやっていた、橋が落ちそうだというのである。じつのところ、渡って行く友吉の足の下で、橋はぶるぶると身震いをしていた。
「今夜の上げ潮が危ねえぞ」
「櫓下から先は土間へ水がついてるそうだ」
水見に来たらしい人々のあいだに、そんな言葉が交わされていた。……降り続く雨で、本所、深川一帯は、もう四五日まえから、洪水の危険に迫られていたのである。友吉はそんなことを聞きながら橋を渡った。
二の一
夕方の満潮が危ないといわれていたのに、その夜は却って水が低くなった。
「こういうなが雨の時には、けっして洪水にはならねえものだ」
そう云って経験を語る老人もいた。
しかし新大橋は暮れがたに通行を止められてしまった。……永代橋はまだ渡れたが、友吉はそのまま深川で宿を取った。