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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
「入地百姓――移民百姓」は、だから呉れるにも貰い手のない泥炭地の多い釧路、根室の方面だけに限られている。
「開墾補助費」が三百円位出るには出た。然し家族連れの移住費を差し引くと、一年の開墾にしか従事することが出来なくなる。結局「低利資金」を借りて、どうにか、こうにかやって行かなければならない。――五年も六年もかかって、ようやくそれが畑か田になった頃には、然しもう首ッたけの借金が百姓をギリギリにしばりつけていた。
何千町歩もの払下げをうけた地主は、開墾した暁にはその土地の半分を無償でくれる約束で、小作人を入地させながら、いざとなると、その約束をごまかしたり、履行しなかった。
健の父は二年で「入地」を逃げ出してしまった。「移民案内」の大それた夢が、ガタ、ガタと眼の前で壊れて行った。仕方のなくなった父親は「岸野農場」の小作に入ったのだった。
「日雇にならねえだけ、まだええべ。」
村に地主はいない
何処の村でも、例外なく、つぶれかかっている小作の掘立小屋のなかに「鶴」のようにすっきり、地主の白壁だけが際立っているものだ。そしてそこでは貧乏人と金持が、ハッキリ二つに分れている。