轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

せそう

世相

織田 作之助

「人間」1946(昭和21)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页

青空文庫

五

私に書く手があれば、引っぱられてもいいから書くんだがなア」

この前より暗くなった明りの下で、天辰の主人は残念そうに言った。

五

「今も書きたいよ。題はまず『妖婦』かな」

家人を相手に言ったのは、何気なく出た冗談だったが、ふと思えば、前代未聞の言論の束縛を受けたあと未曾有の言論の自由が許された今日、永い間の念願も果せるわけだった。

しかし、公判記録を読んでからもう三年になる。三年の歳月は私の記憶を薄らいでしまった。といって、再び借りに行くとしても、天辰の店は雁次郎横丁と共に焼けてしまい、主人の行方もわからぬし、公判記録も焼失をまぬがれたかどうか、知る由もない。朧気な記憶をたよりに書けないこともないが、それでは主人公は私好みの想像の女になってしまい、下手すれば東京生れの女を大阪の感覚で描くことになろう。

夜更けの書斎で一人こんな回想に耽っていると、コトンコトンと床の間の掛軸が鳴った。雨戸の隙間からはいる風が強くなって来たらしい。千日前の話は書けそうにもない。私は首を縮めて寝床にはいった。そして大きな嚔を続けざまにしたあと、蒲団の中で足袋を脱いでいると、玄関の戸を敲く音が聞えた。