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まるのうち

丸の内

高浜 虚子

「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页

青空文庫

表の戸からして粗末である。狭い入口が二つあって、その一つは開けっ放しになっている。沢山の人の出はいりに便宜なようにハンドルが細引か何かでしばりつけてあって一枚の戸が開いている。風がビュー/\吹き込んで寒いだろうが、局員はそんなことには頓著しないのである。

郵便切手を売る口、書留、速達便を受取る口、普通郵便を受取る口などに分れているが、すべて敏活に無造作に取扱われる。

書留、速達便の前には人の山を築いていることもある。私は速達便など持っていく時は、その山の後ろからポンと机の上に抛りなげて、

「たのみます。」というと、局員は他の書留便などを処理している間でも、ちょっとそれを見てうなずいてくれる。そうして、他の書留便に移る寸隙を見て、切手の上に日付のスタンプを捺して前の籠にポンと抛り込む。すべて敏活で無造作である。それがたのみ手の誰であるかという事にもとより頓著はない。小僧、給仕、車夫、勤め人、女給、禿頭、様々な人が群集して来ているが、総てに対してそうである。かの多くの三等局などで、速達便を持って行くと、前に誰かが出したただ一本の書留郵便を処理するのに悠々と時間を費し、漸くその書留郵便を終ると、はじめて速達便に移って、わかっている目方のものを鄭重に秤にかけて見てやっと受取るようなのとは大変な相違である。