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まるのうち
丸の内
高浜 虚子
「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页
中央郵便局
少ない客を載せた円太郎は、雪汗を飛ばせながら景気よく駆けて来る。それが五、六台もたまって黒く雪の中にいるのが目立って見える。
中央郵便局
よく新聞を見ていると、郵便集配人が雪にこごえて山の中に死んでおったという話などがある。『あわれな郵便集配人よ。』とそれ等を読む度に瞼が熱くなるのを覚える。その集配人だとて人である。雪の深い山路などは行き度くないにきまっている。出来る事なら惰けて、終日火燵に燻っていたいであろう。時には暖炉のかたわらにばかりかじりついている上官を呪うこともあろう。決してその死んだ集配人を立派な人とも考えない。職務に忠実な人とも考えない。(職務に忠実で無い人とも無論考えないが)ただその集配人をそんな羽目にまで置く郵便の組織を感心する。集配人を殺す組織を感心するというと変に聞こえるが、それ程までにして郵便物を集配する組織立った郵便事務に敬服する。
私は郵便物を自分で東京中央郵便局に持って行く事が屡々ある。中央郵便局はすぐ東京駅前にある。
この中央郵便局というのは、震災前までも木造の粗末な建物であった。震災後は殊に一夜造りのバラック建である。