轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

憑かれたように立ちなおった弥生が、見るまに血相をかえて手早く帯を締め出したとき、やにわに本降りに変わって、銀に光る太い雨脚が檐をたたいた。

世帯道具――といったところで茶碗皿小鉢に箸が二組と、それにささやかな炊事の品々だが、その茶碗と箸も正直なところできることなら同じ一つですませたいぐらい。

何はなくとも、栄三郎とお艶にとっては、高殿玉楼にまさる裏店の住いだった。

家じゅうがらんとして……というと相応に広そうだが、あさくさ御門に近い瓦町の露地の奥、そのまた奥の奥というややこしい九尺二間の棟割である。せまいなどというのを通りこして、まっすぐに寝れば足が戸口に食み出るほどだったが――。

その、せまく汚ないのがおかしいといってお艶が笑えば栄三郎も微笑む。笊、味噌こしの新しいのさえ、こころ嬉しくも恥ずかしい若いふたりの恋の巣であった。

お艶と栄三郎、思いが叶ってここに家をかまえたまではいいが、自分が逃げたためにもしやお母さんに疑いがかかって、本所の屋敷であの源十郎の殿様にいじめられていはせぬかと思うと、こうしていてもお艶は気が気でなかったとともに、それにつけて、思い出してもふしぎなのは、じぶんを逃がしてくれたお藤さんという女の振舞とその言葉である。