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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「えいッ!」

と迸しらせた空気合いとともに、打ちこむと見せてサッ! と引くが早いか、

「先を急ぎまする、ごめん!」

ひとこと残して泰軒の方へ走り去ろうとすると、剣光、栄三郎の背後に乱れ飛んで、火事装束の武士達一丸となって追い迫ったが、先ほどからこの不意の闖入者をみとめて、泰軒を捨てて馳せ集まっていた化物屋敷の面々、今は自分の頭上の火の子だから、栄三郎ともども、ひとつに包んでかかってきた。

見ると、泰軒はむこうで左膳ひとりを相手に斬りむすんでいる。一刻も早く屋敷のそとへ! と決した栄三郎、ぶつかった鈴川方の一人をパッサリ! と割りさげておいて、泥沫をあげて左膳を襲い、そのダッとなるところをすかさず、泰軒をうながして母家の縁へ駈けあがった。

追ってくるようすはない。

一同、火事装束の新手を迎えて、何がなにやらわからないながらも、降雨の白い庭に力闘の真最中だ。

「泰軒先生ッ! 思わぬじゃまが入りました!」

「なんだ、あの連中はッ」

「やはり、乾雲坤竜をねらう輩と見えまする」

「すりゃ、左膳とあんたにとって共同の敵じゃな――しかし手ごわそうな!」

「は。残念ながらひとまずこの家は引きあげたほうが……」