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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
縁の源十郎へ殺到した刹那に!
突! 薄暮紺色の大気をついて一発炸然と鳴りひびいたふところ鉄砲の音であった。
やッ! 飛び道具の助勢!……と不意をうたれた驚愕の声が、捕吏の口を洩れて、一同、期せずして銃声の方を見やると――。
南蛮渡来の短筒を擬した白い右手をまっすぐに伸ばして、その袖口を左手でおさえた女の立ち姿が、そろりそろりと庭の立ち木のあいだを近づいて来ていた。
思いがけなくも櫛まきお藤である!
それが、これもお尋ね者のお藤ッ! と気がついて捕吏の面々はあらたにいろめき渡ったのだが、お藤は、ゆっくりと歩を運んで、幹を小楯に、ずらりと並ぶ捕役の列に砲口を向けまわして、
「さ、丹下様ッ! お早くッ!――お藤でございます。お迎いに参りました。ここはあたしがおさえておりますから、あなたはなにとぞ裏ぐちから……お藤もすぐにつづきますッ!」
と叫ぶ甲高い声を聞いて、左膳は、何はともあれ脱出するのが目下の急務だから、依然縁さきに佇立する源十郎をしりめにかけて、
「やいッ、鈴源! おれあ手前に咬まれようたあ思わなかったぞ!」
源十郎は冷然と、
「ばかを申せ! 拙者が貴公を訴人したなどとは、徹頭徹尾貴様の誤解だ! 邪推じゃ!」