轻松读懂日语经典作品
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
夜泣きの刀、乾雲丸の取り戻し方を思いとどまってくれ……というお艶のことばは、さながら弊履を棄てよとすすめるに等しい口ぶりだ。
この、うって変わった一言には、さすがの栄三郎も思わずカッ! となった。が、かれも大事を控えて分別ある士、そうやすやすと憤激の情をおもてにあらわしはしなかった。しかし、わざとしずかにきりだした低声は、彼の自制を裏ぎって微かにふるえていた。
「なぜ?――何故また今になって、さようなことを申すのだ? わたしが一命を賭して乾雲を求めておることはそちも以前からよく知っているはず。言わば承知のうえで、拙者と……このようなことになったのではないか……」
「ええ――それはわかっております」
襟もとに顎をうずめて、お艶は上眼づかいに栄三郎を見た。
沈黙におちると、鉄瓶の湯がチインと松風の音をたてて、江戸の真ん中にいながら、奥まった露地のはずれだけに、まるで人里はなれた山家ずまいの思いがするのだった。
お向うの庇ごしに、申しわけのような曇りめの陽が射しこんで、赤茶けた破れだたみをぼんやり照らしている。
朝寒の満潮のような遣瀬ない心地が、ヒタヒタと栄三郎の胸にあふれる。