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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「エエイ黙れッ! このごろの貴様が赤裸々の貴様なら、源十郎はおろか、だれとねんごろになろうとも栄三郎はすこしも驚かぬぞッ! ナ、なんたる……ウヌッ! なんたる淫婦――!」

「ま、待ってくださいッ!」

「姦婦! 妖婦! 毒婦!」

熱涙ぼうだとしてとどめもあえぬ栄三郎は、一つずつ区切ってうめきながら、はふり落ちる泪とともに、哀恋の拳が霰のようにお艶のうえにくだった。

愛する者を、愛するがゆえに打たずにはおかれぬくるしさ……。

よしや振りあげた刹那はいかにいきおいこんでいようとも、その手は、ふりおろす途中に力を失ってお艶の身に触れる時は、おのずから撫でるがごとくであった。

弾き返ったお艶は、栄三郎の手を逃れて柱の根へ飛びさがった。

「何も、あたしをチヤホヤしてくださる方は、鈴川の殿様ばかりとはかぎりません。鍛冶屋の富五郎さんだって、それから当り矢の店へ来てくだすった大店の若旦那やなんか……」

「すべたッ! まだ言うかッ!」

一声おめいた時、栄三郎の手はわれ知らず柄頭にかかっていた。

と見て、お艶は蒼白く笑った。

「ほほほ、このあたしをお斬りになる気でございますか。