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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
双剣一に収まって和平を楽しむの期いまだ到らざる証であろうが、前門に雲舞いくだって後門竜を脱す。
はいる乾雲に出る坤竜。
それはまことに不可測なめぐりあわせであったが、栄三郎はついに乾雲の柄をたたいてにっこりとした。
思ってもみよ!
きょうが日まで刃妖左膳の隻腕にあって、幾多の人の血あぶらに飽き剣鬼の手垢に赤銅のひかりを増した利刀乾雲丸が、今宵からは若年の剣士諏訪栄三郎のかいなに破邪のつるぎと変じて、倍旧の迅火殺陣の場に乾雲独自のはたらきを示そうとしているのだ。
そして丹下左膳の手にはあの坤竜丸が!
乾雲坤竜相会して永久の鎮もりに眠るのはいつの時であろう?
それまではこの夜の雪をさながらにまんじ巴、去就ともに端倪すべからざる渦乱であった。
「それはそうと、ねえ栄三郎さん、お話がございますよ」
おさよ婆さんの声に、栄三郎はわれに返って座敷へもどった。
夜のごとくに栄三郎の隙をうかがって入りこみ、小刀坤竜丸をさらって逃げ去った櫛まきお藤は、この深夜の雪を蹴って、そもいずこへ消え去ったのであろうか?
かのお藤……。
本所の化物屋敷に出入して、万緑叢中紅一点、悪旗本や御家人くずれと車座になって勝負を争っているうちに、人もあろうに離室の食客、隻眼隻腕の剣怪丹下左膳に恋をおぼえ、その取り持ち方を殿様鈴川源十郎に頼んだ