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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
そのあくる日、お徒士組丹下左膳の名が、ゆえしれず出奔した廉をもって削られたのである。
血を流しても孫六を手にすべく、死を賭した決意を見せて、不浄門から放された剣狂丹下左膳、そのころはもう馬子唄のどかに江戸表へ下向の途についていた。
おもて向きは浪々でも、その実、太守の息がかかっている。
この乾坤二刀を土産に帰れば、故郷には、至上の栄誉と信任、莫大な黄金と大禄が待っているのだ。
出府と同時に、本所法恩寺前の鈴川源十郎方に身をよせた左膳は、日夜ひそかに鉄斎道場を見ていると、年に一度の秋の大仕合に、乾雲坤竜が一時の佩刀として賞に出るとの噂。
それ以来、待ちに待っていた十月初の亥の日。
横紙破りの道場荒しも、刀の番をさこうという目的があってのことだった――。
「老主を始め、十人余りぶった斬って持ち出したのだ。抜いて見ろ」
……なが話を結んだ左膳、片眉上げて大笑する。重荷の半ばをおろした心もちが、怪物左膳をいっそう不覊にみせていた。
すわりなおした源十郎、懐紙をくわえて鞘を払い、しばし乾雲丸の皎身に瞳を細めていたが、やがて、
「見事。――鞘は平糸まき。赤銅の柄に叢雲の彫りがある。