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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
凝りかたまったようなしずけさの底に、盤をへだてた泰軒と忠相――。
「黒白、ふしぎな縁じゃ……としか言いようがない。が、こう二石離れれば?」
と忠相、もの憂そうに手を出してふたつの石を盤の隅へ隅へ遠ざけてみせると。
黙ったまま碁笥をとった泰軒は、やにわにそれを荒々しく振り立てた。無数の石の触れ合う音が騒然と部屋に流れる。
「ふうむ」と忠相は瞑目して、「いわば擾乱、災禍――じゃな。して、こうなればどうだ?」
いいながら忠相は二つの石をピッタリと密着して並べる。
泰軒はにっこりして静かに碁笥を下に置いた。そして、両手を膝にきちんと正面から忠相を見る。
「まず、こうかな」
「うむ! 鎮定礼和の相か。そうか。おもしろい」
「が、だ……」と言いかけた泰軒、にわかに上半身を突きだして忠相を見あげながら、「おぬし、どうして知っとる?」
と! 大岡越前守忠相、快然と肩をゆすって哄笑した。
「碁だ! 碁だ! 泰軒、碁のはなし、碁の話」
「ああ、そうだ。碁だったな。碁のこと碁のこと――こりゃと俺がよけいなことをきいたよ。しかしそれにしても……」
「蒲生!」と低い声だが、忠相の調子は冷徹氷のようなひびきに変わっていた。