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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
なあに、丹下様はどんなに急いでいたってかまうこたアねえやな。こちとらアもらった路銀をせいぜいおもしろおかしく散じてヨ、それに帰路はお侍連の東道役、大いばりで江戸入りができようてんだからこんなうめえ話はねえサ。おまけにおいらのこの中村行きは誰ひとり知る者もねえはずだから、栄三郎の側から追っ手の来る心配もなし――ままよ、江戸ッ児の気晴らし旅、まあ、ゆっくりとやるとしよう。
こういう心だから急げば早い足を格別伸ばそうともせずに、泊りを重ねてこの昼すぎちょうどさしかかったのが野州の小金井だ。
古河の町は、八万石土井大炊頭の藩で江戸から十六里。
その古河を今朝たって野木、間々田、小山、それから二里の長丁場でこの小金井。
道中細見記をたどれば、江戸から中村まで七十八里とあるから、つづみの与の公、まだ前途遼遠という次第だが、心がけが遊山気分で、いっこうに足を早めようともせず、こうして日の高いうちからどっかり腰をおろし茶店の老爺を相手に大いに江戸がっているところ。
白い街道にやけに陽が照りつけて、真冬に北へ向かうのだからどんなに寒かろうと内心おびえて来たにもかかわらず、今日なんかは江戸よりもよっぽどあたたかいくらい。