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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

むさ苦しいぼろから頑丈な四肢を投げ出して、半ば口を開けている無心な寝顔に、七刻さがりの陽射しがカッと躍っている。

大賢大愚、まことに小児のごとき蒲生泰軒であった。

それを包んで、中村の剣群も眼を見あわすばかり、軍之助はじめほか一同、黙って足もとの泰軒をみつめている。

いつ覚むべくもない奇仙泰軒……。

かれは。

二本松の町に一夜を明かして、その夜なかに与吉が脱出したことを知るやいな、いく先はどうせわかっている相馬中村――ただちにその足で先まわりして、道なき道を走って飯野を過ぎ、それから川俣、山中の間道づたい、安藤対馬守どの五万石岩城平から、相馬の一行とは同じ往還を逆に、きょう広野村よりこの木戸の山越えにさしかかったところで。

眠くなれば、どこででも寝る泰軒は、日のひかりを背いっぱいに受けて登ってくるうちに睡魔にとりつかれ、今ちょうど山坂の真ん中にひっくりかえって、ひとねむりグッスリとやらかしている最中だった。

そこへ!

思い設けないこの出会い……月輪の剣列、いたずらに柄頭をおさえてじっと見据えていると!

はじまるナ! と看てとった与の公、逸早くコソコソうしろへ隠れてしまったけれど、泰軒はいい気もちに高いびき、すっかり寝こんでいる――のかと思うと、さにあらず!