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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「おぬし、いま笑ったか」

「いンや。笑ったのは貴公だろう?」

「違う。誰だ、笑ったのは?」

がやがやと問いあっているところへ!

二間と離れない草むらから猿のように黒い物がとび出したかと思うと、長い手が一振するが早いか燐光ふたたび流星のごとく閃尾を引いて、またしても飛剣、真ッ先に立った夏目久馬の脇腹をえぐって地にのけぞらした。

「ふはははは!」

笑いを残して、小さな影はすっ飛んでゆく。

「曲者ッ!」

と面々、それッとばかりに追おうとするや、室内にとどまっていた左膳、源十郎、軍之助の三人が、口ぐちに叫んで皆を呼びあげた。

そして、何事か――にわかに離庵全体の雨戸をおろさせ、丹下左膳が、最初に飛来して軍之助の酒盃を割った小剣を畳から抜き取るのを見ると、五寸あまりの鋭利な小柄で、手もとに一ぽんの小縒りが結びつけてある。

みなの目が好奇に光るまえで、左膳、紙縒を戻して大声に読みあげた。

御身ら二十名は順次にわが手裏剣の的也。

何者からか殺剣とともに送られた威嚇の言!

「フン! きいたふうな真似をしやがる!」

と吐き出すように苦笑した左膳、不意におちた沈黙の底で、なみいる頭数をかぞえ出したが、いま殺られた二人を加えて月輪組の十七名に、源十郎、与吉で十九、それにじぶんでちょうど二十と最後におのれを指さしたころ。