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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「偽役人であろう?」

泰軒がこう横あいから口を出すと、忠相はジロリとそのほうを見やって、

「これは、貴公にも似合わぬ。最初からおれは上役人だが……と自ら名乗ってこそ故意に役人をかたったものとりっぱに言い得るが、今も聞いたとおり、初手は黙っておったとすれば――? 越州察するところ、こりゃ単に役人にまぎらわしき風体のものであろう。ううむ、覆面でもとれるか、不覚に顔を照らし見られでもして、幸いおのれが平常より役人に似ておることを心得ているゆえ、また伊兵衛とその新助とやらが確かに役人と思いこみおるようすに、その場にいたってにわかに役人風を吹かせたものに相違あるまい」

「あッ!」かえってお艶のほうが大岡様から知らされるくらいで、

「おっしゃるとおりでございます。申し忘れましたが、初めは覆面をしておりましたそうで、それが抜け落ちて顔を見ますと、どうやらお役人……」

「そうであろう。曲者は、覆面で足りれば役人顔はしとうなかったのじゃ。それが、顔を見られて役人とふまれたればこそ、自ら役人に似ておることを利用したのであろうと思われる。フウム、いよいよ常から役人らしき風俗をいたしておるものの所業ときまった! めあては金子! ははあ、一見役人とまがうこしらえの者が金につまっての斬り奪り沙汰――誰じゃナ? 蒲生心当りはないか」