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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
お艶はどうした?
彼女は、首すじに毛虫を這わせるおもいで鍛冶富になれなれしくして酒をすすめたのち、泰軒と栄三郎の立ち去ったのを見すますが早いか、ただちにその家の若い衆を走らせて泰軒だけを呼び戻しいそぎ二階の隣室に左膳の一団が宴を張っていて、いまにも瓦町へ押しかけようとしていることを告げたのだった。
だから、時分はよかろうと、左膳、軍之助の連中が旗亭をあとに、ほんの四、五十歩も踏んだかと思うところへ先ほどから献燈のかげに待ち構えていた栄三郎が、現われると一拍子に、先頭の法勝寺三郎を抜き撃ちにたおしたのだ。
月に更けゆく夜――。
左膳をはじめ月輪組も、栄三郎も無言。
泰軒はどこか近くにひそんでいるのであろう。
遠くで、樹陰から木かげへと大小ふたつの人影が動いた。
ポタリ……夜露が木の葉を打つ音。
寂莫たる深夜――ふかがわ富ヶ岡八幡の社地に、時ならぬ冷光、花林のごとく咲きつらなったのは丹下左膳、月輪軍之助、各務房之丞、山東平七郎、轟玄八、岡崎兵衛、藤堂粂三郎ら乾雲の一団が、相手は一諏訪栄三郎と侮って、一気にしてこれを屠り坤竜丸をおさめるつもり――鍔鳴りのひびきが錚然として月明に流れた。