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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

と見る!

数条の血線、ながく闇黒に飛散して、兵衛はたちまちはりきっていた力が抜け、あやつり人形の糸が切れたように二、三度泳ぐような手つきをしたかと思うと、そのままガックリと地にくずれてのけぞった。

思わぬ時に意外な伏勢!

しかも、薄明の夜に防ぎようのない魔の手裏剣である!

即座に、一同のあたまに電光のごとくひらめいたのが、あの、過ぐる夜半、本所化物屋敷の庭に突如として現われ、またたくまに二、三月輪の剣士を亡き者にしてはてた猿のような一寸法師と彼の投剣術だ……。

なんじらは順次にわが手裏剣の的なり――。

この威嚇の文句も、いまだかれらの眼にこびりついている……そのやさき、こうしてなんの前ぶれもなく、小刀、どの方角からとも知れずに疾飛しきたって、またもや剣を取っては錚々たるひとりの同志を、まるで流れ矢にでも当たったように他愛なく射殺したのだから月輪の剣連、瞬間、栄三郎をも泰軒をも忘れて、ひとしく驚愕と畏怖にたじろいだ。

事実!

かのふしぎな、手裏剣手は岡崎兵衛を倒したのみにあきたらず今、夜はどこまでもその入神錬達の技を見せるつもりらしく、つづいて二の剣、三の剣と月光をついてシュッ! シュッ! という妖奇な音が、ながくあとを引いて木の間の空に走り出した。