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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

を離して派遣しさえすればこの合符割文の文づかいは、当時まず安全に近い通信法となっていた。

これに思いついたのであろう、関の孫六が、その水火鍛錬の秘訣を後人に遺した文状は、すなわちこの合符わり文の一書二分になっていたのだ。

かれ孫六……。

死床にあってすでに天命の近きを知るや、人を遠ざけた病室にひとり粛然と端座してしずかに筆紙をとり、ほそ長い一片の紙に針の先のごとき細字をもって――。

一、水はやいばわたしが肝じんにて候。

そは、熱刀を水中に入るるに当たり――。

うんぬんと書きつらね、同時に、おなじ紙の末尾より文を起こし、最初の文字の行と行のあいだへ、左から右へ読まして……。

一、火は大わかし小わかしのことにて候。

そは、はじめに地鉄を積むとき――。

と、ここに、この一狭紙に、水火両様の奥伝をしたためて、のち此紙を真ん中から二つに裂き、水の条からはじまる最初の一片と、火のくだりを説いてある後半の別紙と、おのおの別に切り離して世に残すことにしたのだった。

そのとき孫六。

やまいを得るまえに最近仕上げた陣太刀づくりの大小を手にとり赤銅にむら雲の彫をした刀の柄をはずして、その中心に後半の火密を巻きこめ、おなじく上り竜をほった脇差のつかの中に前片水秘の部を締め隠したのである。