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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
どこからともなく……。
「乾雲! これ、坤竜が慕うて参ったぞ! 坤竜が来たのだ! あけろ!」
低声である。
それが、たとえば隙洩る風のように左膳の耳にひびいたから、ハッ! としながらも――。
耳のせい……ではないか?
と!
たしかめようとして、左膳が枕をあげた――いや、あげようとした、その瞬間であった。
左膳と、むこう側の月輪軍之助の臥ているところとのあいだに、たたみ一畳のあきがあって、のみかけの茶碗や水差しが、どっちからでも手がとどくように、乱雑に置いてあるのだが!
ふしぎ!
左膳が、地震ではないか?……と思ったことには。
その茶碗や水さしがひとりでに動き出して、オヤ! と眼をこすって見ているまに!
ムクムクと下から持ちあがった畳!
それが、パッ! と撥ね返されると!
驚くべし――。
いつのまにやら床板がめくりとられて、ぱっくりと口をあいた根太の大穴。
しかも。
そこに、まるで縁の下から生えたように突ったちあがった二人の人物……諏訪栄三郎に蒲生泰軒。
あらしの音にまぎれて忍びこみ、下から板をはがしたものであろう。ふたりとも襷に鉢巻、泰軒先生までが今夜は一刀を用意してきて、すでに鞘を払っている。