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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「起きろッ! 夜討ちだアッ!」

どなりつつ、のけぞりながら左膳一振、早くも乾雲の皎刀を構えた左膳、顔じゅうを口にして二度わめいた。

「起きねえかッ、月輪ッ」

が!

同時に、

ウウム……断末魔のうめき。

泰軒の刀鋩が、轟玄八のひばらを刺したのだ。

栄三郎は、蒼白いほほえみとともに、もうノッソリと穴から部屋の中へあがっていた。

立ち樹が揺れて、梢が屋根をなでる音――。

夜着のうえから一突きにされて、声もあげ得ずに悶絶した轟玄八のようすに、白河夜船をこいでいた他の三人も、パチリと眼がさめてとび起きた。

見ると!

すっかり身じたくをした諏訪栄三郎に蒲生泰軒、ともに、あんどんの薄光を受けて青くよどむ秋水を持して、部屋の左右に別れているから、三人、帯をしめなおすまもない。

てんでに刀へ走って、鞘をおとした。

左膳は?

と気がつくと、床下づたいに広庭へおびき出すつもりか。ソロリソロリと後ずさりに、いま、泰軒栄三郎の出てきた根太板の穴のほうへ近づきつつある。

荒夜の奇襲。

つとに満身これ剣と化している栄三郎、声――は、胆をしぼって沈んでいた。

「丹下どの?……今宵は最後とおぼしめされい!」