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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页
狩屋三郎の話は奇怪でしたが、そんな噂は波野幸子も小耳に挟まないではありません。その隠された財宝のために、老狩屋三右衛門は牢獄につながれたり、或る種の暴漢に襲われたり、ずいぶん散々の目に逢った話まで伝わっていたのです。
「もっとも、祖父も頑固一徹にしていたわけではなく、純金の大部分は、時の政府に寄付しましたが、何分の巨額で、まだその三分の一ぐらいと、おびただしい宝石の全部が、手つかずに、秘密の倉庫の中に眠っているはずです」
「――――」
「思い出しても恐ろしい事ですが、戦争の末期――ちょうど今から四年前に、祖父は私の妹をつれて、九州の阿蘇の麓に疎開して、静かに戦火を避けておりました。その家は土地の豪家を借りて、非常に広かったので、戦争のために家を失って困っている人のうち、紹介や縁故のある、信用のできる人たちを九人までも集めて、一年余りもそこで共同生活をしていたのです」
「――――」
「不自由なうちにも、それはまことに楽しい生活だったそうです。ぼくはまだ学校があったので、東京の家に残って、学校へ通っておりましたが――」
「――――」
幸子と馬吉は吸い入るように聴いております。