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ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页

青空文庫

眠りの城

狩屋三郎の話は終りました。

眠りの城

十八才の天才洋琴家狩屋愛子は、その独奏会の帰途、兄三郎の眼の前で、番町のあるビルディングの屋上から下った鉤縄に引っかけられ、夜の空へスルスルと引き揚げられたっきり、行くえ知れずになってしまったのです。

その大胆不敵な誘拐の裏には、三郎愛子兄妹の祖父で、一時は日本の炭鉱王と言われた、狩屋三右衛門翁の隠した、純金の大量と、おびただしい宝玉をめぐる大秘密があり、その巨億の宝を封じた九つの鍵は、祖父三右衛門翁が、悪者に追い詰められて、阿蘇の噴火口の中に投り込んでしまいました――と。

これは三郎青年が、波野幸子、馬吉姉弟に説明した、事件の荒筋でした。

その話のうちに、さっき馬吉少年の急を告げた報告が、交番から麹町署へ、麹町署から警視庁へと伝達され、十数名の警官が時を移さず駆けつけてくれました。狩屋三右衛門翁の孫娘で、その晩は日比谷音楽堂にリサイタルを開いた、天才少女狩屋愛子の失踪には、容易ならぬ大事件の匂いがしたのでしょう。

狩屋三郎と波野馬吉少年は、警官隊を案内して、ビルディングの内外を、残るくまなく探索しましたが、もとより人っ子ひとりいそうもなく、ビルディングの管理人と称する山裏金司という中年男を、夜中ながら四谷の自宅から探し出して来て、建物中の部屋を全部空けさせて調べまし