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ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页

青空文庫

「いや、――愛子はさらわれたけれども、まさか阿蘇の麓に疎開生活をしている頃持っていたものは、四年後の今日、一つも身に着けていないはずだ」

「なるほど、若い女の人が、同じ物を四年も五年も身につけているはずはない、――阿蘇の麓にいる頃、愛ちゃんがそばにおくか身に着けていたもので、ここに残っているものはないのか」

「ある――第一そのピアノだ」

三郎が部屋の隅にある竪台のピアノを指すと、

「しめた」

誠一が飛びつくのと一緒でした。

「だめだめ、そのピアノはゆうべの悪者共が、裏板まではがしてメチャメチャにこわしてしまったよ」「ほかには?」

「愛子はよく絵を描いた、――君も知っての通り、油絵の絵の具があったはずだ」「それだッ」

「いや、ちがう、その油絵の絵の具も、チューブを一本一本押し出して、ひどいことになっているが、鍵などは隠していなかったはずだ」「ほかには?」

「あるかも知れぬが、愛子に訊かなければわかるまいよ」

その話の最中です。

「あの、大変でごさいますが――」

若い女中のお光が扉の外からあわただしい声を掛けました。

「どうした」

四人がみんな立上ったことは言うまでもありません。