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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
と云って、立ってしまった為、一層、傷けられて感じ、絶望したように見える。
自分は、
「それじゃあ、左様なら。おやすみなさいまし」
と云って、下へ降りた。
此で、少くとも当分、又此処へは来られないなどとは、自分に嘘にも真個にされなかった。而も、それが事実なのだ。
帰る道々、自分は、余り、意外な大きな事が突然起ったので、あの、青桐の黒い梢の見える明るい二階の縁側も、激しく声をあげて泣いた自分も、皆、夢の中のことのような心持がした。事に関しては、麻痺してぼんやり平気になったように感じた。
が、床に入り、四辺が静になると、自分は、激しい悲しみに捕われて、気が遠くなるほど歎いた。
憎い、どうでもよい者に、誰が此程涙を流そう。母よ。貴女も、今、そちらの静かな闇の中で、斯様な悲しみに打れて居らっしゃるのですか。何と云うことだ。辛いことだ。然もそれが避けられない――。彼の家で育った二十幾年かが、津浪のような記憶で、自分の感傷を溺らせた。
翌日、自分は心が寥しく病んだようになり、一日床についた。
その夜から、十一月の四日迄、まる一箇月、自分は到頭林町に足踏みしなかった。