轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

「新小説」1920(大正9)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,102 字 · 104 页

青空文庫

啓介もそれを望んだし、それの方が台所の用には便宜だった。木下はその時々の気分によって、食事中黙りこくっている時もあれば、盛んに種々なことを饒舌る時もあった。看護婦はそれを木下さんの「曇り」或は「晴れ」と呼んだ。

婆やの仕事の一部分は、いつのまにか信子が引受けてしまっていた。彼女はそれを、より丁寧に、より細心な注意で、やってのけた。彼女は木下の着物を畳んでやった。洋服の埃を払ってやった。汚れ物を婆やに洗濯さしたり、時には下駄の泥を拭いたりした。画室の掃除も時々自分の手で行った。

夜になると、婆やはいつも早く寝たが、皆はよく遅くまで病室に起きていた。皆の途切れ勝ちな話をききながら、啓介は勝手に眠ったり眼を覚したりした。木下が立って行こうとすると、「も少し話さないか。」と啓介は云った。然し別に話すこともなかった。木下は書物を持って来て、寝転んで読んだ。面白い所になると声を出して病人に読んできかした。信子がそれにじっと耳を傾けていた。

「尾野さんはもうお寝みなすったら。朝が早いから。」と信子はよく看護婦に云った。――木下は朝遅くまで寝る習慣だったが、病室の横の方に看護婦と床を並べて寝ている信子は、大抵看護婦と同じ時分に起き上った。