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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
「新小説」1920(大正9)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,102 字 · 104 页
」
木下は中途で口を噤んだが、暫く思い迷った後に云い出した。
「どうも変だ。」
「何が?」
「僕は一寸気を惹かれる景色を見出した。枯れた樫の大きいのが一本立っていて、その根本に冬枯れの叢がある。雑草の枯れた茎が六七本寒そうに残って風に戦いでいる。その横には、枯芝の野が広がっている。僕はそれに一寸或る種の興味を見出した。樫の幹の下半分と、根本の叢と、周囲の芝生とを、四角く画面に取り入れると、全く荒廃そのものだ。樫の幹を少し右手に寄せて構図の中心とし、根本の叢と芝地とで画面の下半分を塗りつぶす。背景は一切取り入れない。全体を少し高めに浮き出さして、その向うは陰欝な冬の曇り空とする。生命のある物は何もないんだ。樫の幹は枯れている。叢も芝生も枯れている。地面は物の芽ぐむのを許さない冷え切った土、空は暗澹とした冬の雲。太陽の暖かい光りを受けない一面の灰色だ。僕はそれで、荒廃そのものを、冬そのものを、象徴しようと思った。この頃の曇った天気は、特に好都合なんだ。僕は光りの鈍い午後に、よく其処へ出かけて行った。所が……、君、聞いてて疲れやしない?」
「いや、僕はいつも退屈しきってるから却っていいんだ。