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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

早苗のおでこのかすりきずは、ついこないだ、ミサ子と二人で肩をくんでスキップで走っていて、道路から浜におちたときの怪我だとわかったし、キッチンの家では豚が三匹も豚コレラで死んでしまい、お母さんが寝こんだ、などと話はつきなかった。

小ツルは、先生のからだをつかまえて、ゆすぶり、

「先生、仁太、どうしてこなんだか?」

「あ、それ聞こう聞こうと思ってたの。どうしたの。病気?」

すぐには答えず、みんな顔見あわせて笑っている。先生もつられて笑いながら、これはきっと仁太が、とっぴょうしもないことをしでかしたにちがいないと、ふと思った。

「どうしたのよ。病気じゃないの?」

早苗の顔を見ていうと、早苗はだまってかぶりをふり、目を伏せた。

「らくだい」

ミサ子が答えた。

「あら、ほんと?」

おどろいている先生を、笑わせようとでもするように小ツルは、

「いつも、はな、たらしとるさかい」

みんなは笑ったが、先生は笑わなかった。

「そんなことうそよ。はなたらして落第なら、みんな一年生のとき落第したわ。病気かなんかで、たくさん休んだんでしょ」

「でも、男先生がそういうた。はなたれもしだいおくりというのに、仁太は四年生になってもはなたれがなおらんから、も一ぺん四年生だって」