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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
稲川先生が片岡先生とは師範学校の同級生だというので、一おうしらべられたのだが、なんの関係もないことがわかったというのである。つまり、証拠になるものが出てこなかったのだ。そのさがしている証拠品というのは、稲川先生が受けもっている六年生の文集『草の実』だというのである。それが、片岡先生の自宅にも、学校の机にもなかったのだ。
「あら、『草の実』なら見たことあるわ、わたし。でも、どうしてあれが、あかの証拠」
大石先生はふしぎに思ってきいたのだったが、教頭は笑って、
「だから、正直者が馬鹿みるんですよ。そんなこと警察に聞かれたら、大石先生だってあかにせられるよ」
「あら、へんなの。だってわたし、『草の実』の中の綴方を、感心して、うちの組に読んで聞かしたりしたわ。『麦刈り』だの、『醤油屋の煙突』なんていうの、うまかった」
「あぶない、あぶない。あんたそれ(『草の実』)稲川くんにもらったの」
「ちがう。学校あておくってきたのを見たのよ」
教頭はきゅうにあわてた声で、
「それ、今どこにある?」
「わたしの教室に」
「とってきてください」
謄写版の『草の実』は、すぐ火鉢にくべられた。