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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
せめて残っている子どもたちへのみやげにと思ったのである。
屋島をあとに、最後のスケジュールになっている高松に出、栗林公園で三度目の弁当をつかったとき、大石先生は、大かた残っている弁当を希望者にわけて食べてもらったりした。弁当までが心の重荷になっていたことに気づき、それでほっとした。夕やみのせまる高松の街を、築港のほうへと、ぞろぞろ歩きながら、早く帰って思うさま足をのばしたいと、しみじみ考えていると、
「大石先生、あおい顔よ」
田村先生に注意されると、よけいぞくりとした。
「なんだか、疲れましたの。ぞくぞくしてるの」
「あら、こまりましたね。お薬は?」
「さっきから清涼丹をのんでますけど」といいさして思わずふっと笑い、
「清涼でないほうがいいのね。あつういウドンでも食べると……」
「そうよ。おつきあいするわ」
そうはいったが前にもうしろにも生徒がいる。それを桟橋の待合所までおくってからのことにした。男先生たちに事情をいって、一人ずつそっとぬけだし、目だたぬよう大通りをすぐ横町にはいった。そこでも土産物やたべものの店がならんでいた。軒の低い家並に、大提灯が一つずつぶらさがっていて、どれにもみな、うどん、すし、さけ、さかななどと、太い字でかいてあった。