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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
を歌うものもいた。
そんななかで、大石先生はひとり考えこんでいた。その考えから、いつもはなれないのが早苗だった。
ほんとに、風邪けだったのかしら。
早苗のほかにも、十幾人かの子どもがそれぞれの理由で旅行にこられなかったのだが、とくべつに早苗が気になるのは、岬の生徒で、彼女ひとりが不参加だからかもしれぬ。六年になってから、マスノはすっかり母たちの家へ移っていたので、もう岬の仲間ではなくなっていた。たったひとり、あの岬の道を学校へゆく今日の早苗を思うと、今日を休みにしなかったことが、かわいそうに思えた。先生もいない教室でしょんぼり自習している生徒たちを思うと早苗ばかりでなく、かわいそうだった。
こんぴらは多度津から一番の汽車で朝まいりをした。また「こんぴらふねふね」をうたい、長い、石段をのぼってゆきながら汗を流しているものもある。そんななかで大石先生はぞくりとふるえた。屋島への電車の中でも、ケーブルにのってからも、それはときどき全身をおそった。膝のあたりに水をかけられるような不気味さは、あたりの秋色をたのしむ心のゆとりもわかず、のろのろと土産物屋にはいり、同じ絵はがきを幾組も買った。