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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
しかし人は富士子をさげすみ、おもしろおかしく噂をした。
今ではもう人の記憶から消えさったかに見える松江といい、今また富士子といい、どうして彼女たちがわらわれねばならないのか。しかし、大石先生の心の中でだけは、彼女たちも昔どおりいたわられ、あたためられていた。
――マッちゃんどうしてる? 富士さんどうしてる? ほんとにどうしてる?……
ときどき先生は呼びかけていた。
まっとうな道とはどうしても思えぬ富士子たちにくらべると、小ツルや早苗は健康そのものにみえた。優秀な成績で師範を出た早苗は、母校にのこる栄誉を得てその瞳はますますかがやき、大阪の産婆学校を、これも優等で卒業した小ツルとは、大石先生をまん中にして仲よしになっていた。実地の勉強をかさねたうえで、小ツルは郷里に帰るのが目的であった。わざとかうっかりか、手紙の宛名を大石小石先生と書いてきたりするのだが、人間の成長の過程のおもしろさは、母の予言どおりおしゃべりの小ツルを幾分控え目に、無口な早苗をてきぱき屋に育てていた。
二人はすくなくも年に二度、さそいあっておとずれてくる。たいてい夏の休暇と正月で、もってくる土産も同じだった。