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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

そしてもう永久に会うことのできなくなった教え子たち。はげしい戦いにたおれた今、幾人がふたたび故郷の土をふみ、ふたたび会えるかと思うと、心は暗くしずむ。

悪夢のように過ぎたここ五年間は、大石先生をも人なみのいたでと苦痛のすえに、小さな息子にいたわられながら、このへんぴな村へ赴任してこなければならぬ境遇に追いこんでいた。わが身に職のあることを、はじめて彼女は身にしみてありがたがった。教え子の早苗にすすめられて願書は出してみたものの、着てゆく着物さえもないほど、生活は窮迫の底をついていた。不如意な日々の暮しは人を老いさせ、彼女もまた四十という年よりも七八つもふけている。五十といっても、だれが疑がおう。

いっさいの人間らしさを犠牲にして人びとは生き、そして死んでいった。おどろきに見はった目はなかなかに閉じられず、閉じればまなじりを流れてやまぬ涙をかくして、何ものかに追いまわされているような毎日だった。しかも人間はそのことにさえいつしかなれてしまって、立ちどまり、ふりかえることを忘れ、心の奥までざらざらに荒らされたのだ。荒れまいとすれば、それは生きることをこばむことにさえなった。