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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

ききかえすものもなかった。それがまた、二人にはおもしろくてたまらなかった。向こうから知った人の姿があらわれるたびに、

おそろいでどちらへ、

と二人は、母子三人だけに聞こえる声でいう。すると、かならずそれはあたった。

「おそろいでどちらへ?」

「ぴくにいくんです」

並木はすごく早口でいって、とっととゆきすぎた。大吉がおっかけていって、二人はしゃがみこんで笑う。こんなことは生まれてはじめてなので、二人はうきうきしていた。何度も同じことをくりかえしているうち、もうたずねる人もなくなったころには、隣りの村にさしかかっていた。本村にさしかかり、お母さんと別れねばならぬ場所が近づくと、さすがのきょうだいも少し不安になったらしく、かわるがわるきいた。

「お母さん、ぼくらのピクニックのほうが早くすんだらどうしよう」

「そしたら水月の下の浜で、石でも投げてあそんどればいい」

「本村の子が、いじめにきたら」

「ふん、並木もいじめかえしてやりゃあいい」

「ぼくらより強かったら」

「かいしょうのない、大きな声でわあわあ泣くといい」

「笑われらァ」

「そうだ、笑われらァ。泣き声がきこえたら、お母さんも水月の二階から手たたいて笑ってやらァ」