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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

「わあ、どうしよう!」

早苗は子どものように大声をあげた。

「あたったの? 二人ともきたの?」

「いいえ、ひとりです。ひとり。あてて? わあ、もうわかったわ。いるんだもん」

三人はもう水月の前にきていた。見ていたのか玄関には小ツルやマスノをまん中にして、ずらりとならんでいたのだ。黒めがねの磯吉にどきんとしている大石先生の肩へ、いきなりしがみついて泣きだしたのは、マスノの横に立っていた、どことなくいきなつくりの着物をきた女だった。

「せんせ、わたし、松江です」

名のられるまえに、先生もすぐ気がついた。

「まあ、ほんとに珍らしい顔。よくきたわねマッちゃん、ほんとに、よく。ありがとうマッちゃん」

松江はしゃくりあげながら、

「マスノさんから手紙もらいましてな、こんなときをはずしたら、もう一生仲間はずれじゃと思うて、恥も外聞もかなぐりすててとんできました。先生、かんにんしてください」

それこそ恥も外聞もなく泣きだすのをみると、マスノはわざと衿がみをつかんでひきもどしながら、

「これ、マッちゃんひとりの先生じゃありませんぞ。さ、いいかげんで、上へ行こう、行こう」

やっぱり海に向かった座敷だった。